ひとくちに「ビール」といっても、原料や製造方法で、様々な味わいや特徴があります。
スタイルごとに、その一部をご紹介いたします。
黒くなるまでローストした大麦(モルトとは限らない)を使用し、上面発酵によって醸造されるものをします。名前の「スタウト」(stout)とは、「強い」という意味であり、その名の通り、味は濃厚で、苦み・酸味とも強いのが特徴です。
アルコール分は一般的なラガー・ビールより高いものが多いのですが、カロリーはラガーよりも低くなっています。飲み方としては、そのまま飲む以外に、普通のビールに割って飲んだり、生卵を落として飲む方法もあります。
日本におけるビールの分類では「濃色の麦芽を原料の一部に用い、色が濃く、香味の特に強いビール」となります。
淡い色の大麦麦芽を使用して醸造したものです。伝統的なのはイギリスのパブの『ビター』 (Bitter (beer)) 。アルコール度数は3%から4%以上で、最高でバーレーワインの12%があります。
ホップの度合いも様々で、ほとんど気づかないレベルのものから、ダブル・インディア・ペール・エール(Double India Pale Ale)の例のように100IBU超まで幅広くあります。
インディア・ペール・エールは、イギリスからアジアの植民地に運ぶ間の腐敗を防ぐため、ホップを強めの比重で醸造しているのが特徴です。
今日、IPAと表記されるビールは、スーパープレミアム・ペール・エールを示します。
尚、アンバー・エールとは、やや濃いスタイルを示す北アメリカの用語です。
ウィートビールは通常の大麦に加えて、小麦(ウィート)を大量に使用したビールです。
その特有の酸味には、ほかのビールには無い、爽やかさと喉の渇きを潤す働きがあります。
古代より小麦はビールの原料として使われて、1516年にバイエルン公ヴィルヘルム4世が「ビールは大麦、ホップ、水以外の原料を使用してはならない」という「ビール純粋令」を制定しました。
例外的に宮廷醸造所や一部の修道院には小麦の使用が許され、そのため貴族や富裕層が小麦のビールを独占することになり「貴族のビール」とも呼ばれています。
小麦をつかったビールには南ドイツで多くみられる「ヴァイツェン」や、スパイスやハーブを添加した「ベルギースタイル」があり、近年では米国やカナダで薄色でさっぱりとした味わいの「アメリカン・ウィート」などが造られています。
いずれも上面発酵で熟成は短期間、その白濁した色あいから「ホワイト」ヴァイセ」「ヴィット」「ブロンシュ」など各国の言葉で白を意味する呼び名がつけられています。
原料に麦芽を使用し、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス( Saccharomyces carlsbergensis )という酵母を用い、低温(10℃以下)で熟成させながら比較的長時間の発酵を行う。酵母が最終的に下層に沈み込むため、下面発酵と呼ばれています。
元々は、ドイツ・バイエルン地方のローカルなビールでした。この土地の醸造師たちは、低温でも活動する酵母の存在に気づき、特別なビールを醸造していました。
それは秋の終わりにビールを洞窟の中で氷と共に貯蔵し、翌年の春に取り出すというもの。
それが、冷却機などの設備が発明された19世紀以降に世界中に普及し、それまでの主流だったエールをしのいで、瞬く間にビールの主流となりました。
この方式は、大規模な設備を必要としますが大量生産に適していることから、現代では、日本を含め世界の大ビールメーカーの主流方式であり、ビール生産量の大部分を占めています。
ベルギーは言わずと知れた「ビール王国」。
中世に修道院の修道士によって作られはじめたのが始まりです。
その後、ジャン1世がビール作りを推奨したことも手伝い発展してきました。
ビールの多様性を生んだ背景には様々な要因が挙げられますが、国の緯度が高く、ワインを作成するのに向く良質な葡萄がとれず、ワインは発達しなかった事。19世紀に入るまで主流であった自然発酵製法(ランビック)に向く好条件が揃っていたこと。ドイツやチェコほどの良質なホップがとれなかったこともあり、旧来のハーブやスパイス、フルーツを使った醸造法が近年まで受け継がれていたこと等があげられます。
アルコール度数が高いものの一部は、冬季にホットで味わうのにも向いています。
その原料はビールの主な原料である大麦の他、小麦や砂糖、スパイス、ハーブ類も使用します。中には、できあがったビールを再発酵させる場合もあり、その際にはフルーツを加えたり、他のビールとのブレンドを行う手法もとっています。
銘柄ごとにロゴや独自の形をした専用グラスが多い事も特徴の一つとしてあげられ、ベルギービールを味わうためには専用グラスが重要であり、グラスの違いで味わいに歴然の差が出ると言われています。
ベルギーのブリュッセルの南西に位置するパヨッテンラント地域でのみ醸造される非常に珍しいビールのスタイル。醸造用酵母を慎重に培養して発酵させるエールやラガーの習慣とは異なり、ランビックは自然発酵で造られます。
自然発酵は、ブリュッセルを縦断するゼンネの谷に自然に生息すると言われている野生酵母とバクテリアにさらされることで起こります。
ドライで、ワインやシードルのようなわずかな酸味という特有のフレーバーをビールに与えるという珍しい工程を経ます。
スコットランドは世界最大のウイスキー生産国であると同時に、モルトの生産大国でもあります。
古くより寒い冬を生き抜くため、フルボディでモルトの風味が強いエールで体を温めるという伝統が生まれました。今ではライトボディのブロンドやダークブラン色が好まれ、アルコール度数によって「ライト」「ヘヴィ」「エクスポート」「ウィー・ヘヴィ」と呼ばれます。
また、ウィスキーの産地ならではのウィスキー風味のエールや、泥炭(ピート)のスモーキーなフレーバーをもつエールが多いのも特徴です。
アイリッシュエールは、呼び名のとおりアイルランドで伝統的に造られるエールです。
アイルランドでは古来より赤いモルトが好んで使われ、それは今日でも、アイリッシュ レッド エールと呼ばれ世界中で愛飲されています。
アルコール度数が8から12%にも達し、初期比重も1.120ほどと高い。
ワインと同じぐらいの強さという意味でバーレーワイン(英語:barley wine、日本語直訳:麦のワイン)と呼ばれる。しかし、ブドウではなく麦芽から造られるためワインではなくビールである。
フルーツの風味をもち、高いアルコール度数であり、良い熟成が進んでいるので、ゆっくり飲むことに適している。ホップを多く含んでいる上にアルコール度数も高いため、ワインと同様に長年をかけて熟成が進む。大半のバーレーワインは、琥珀色から赤褐色の間の液色を持つ。
1950年代のWhitbread Gold Labelの出現まではバーレーワインの液色はすべてダークであった。
アルトとケルシュは、それぞれドイツのデュッセルドルフとケルンで昔から伝わる伝統的製法を守り続けている上面発酵ビールの名称です。
ともにエール酵母を使って上面発酵させますが、0℃に近い低温で熟成させるためエールのような豊かな風味を持ちながらも、ラガーのようにすっきりとした喉越しを持っています。